2016/06/03

アフリカ②マダガスカル島 世界遺産を狙ってみるべき

  • 島というには大きすぎ

島のループ線シリーズ、今回はアフリカの東にあるマダガスカル島のループ線をご紹介します。

マダガスカル島は南北1200km、東西460kmの大きな島です。本州ですらすっぽり収まるという世界4位の面積を持つ巨大な島です。

マダガスカル島はアフリカの傍にありますが、島の中央部が2000m級の山岳地帯になっていて、さらにインド洋からモンスーンが吹き込むおかげで、特に島の東側で十分な降雨があります。住民の大部分はマレーポリネシア系で、言葉もマレー系の言葉が使われており、一般的なアフリカのイメージよりもむしろ東南アジアに近い雰囲気があるそうです。アフリカに一番近いアジアとも言われており、主要な農作物はなんと稲作だというから驚きです。


島のほぼ中心にある標高1300mの首都アンタナナリヴォは、赤道に近いにもかかわらず一年中過ごしやすい常春の町だそうです。

マダガスカルはかつてフランスの植民地だったため、鉄道もフランス製のメーターゲージで建設されました。植民地時代の1909年に島の東側のブリッカビル(ヴォイビナニー)から首都アンタナナリヴォまで開通しています。ブリッカビルは大きな川沿いの港町でフランス人のブリッカ氏にちなんで付けられた町の名前です。地図によっては現地語のヴォイビナニーと表記されている場合があって混乱しますが、どちらも同じ町です。

1913年にはブリッカビルの北にあるマダガスカル最大の港町トゥアマシーナまで開通しています。このトゥアマシーナも地図によっては現地語でタマターヴェと書いてある場合があります。

アフリカ大陸側ではなくインド洋側に向かって鉄道が敷かれたのは、ヨーロッパの植民地政策の影響でしょう。もしアフリカ大陸の対岸のモザンビークと同じ宗主国になっていたら、今とは違った鉄道路線図になっていた可能性が高いと思います。

  • 丘陵地帯のフルオープン一回転半ループ線

そんなマダガスカルのループ線は、海沿いから高山地帯にある首都へ向かう上り坂の途中にあります。海沿いと高山地帯の間には断崖絶壁の箇所があり、正面から上れなかったため、川の支流に沿って一旦迂回して断崖絶壁を斜めに上って行きます。
断崖を斜めに上っています
この区間の標高差は280m,勾配は20‰です(最急25‰)

衛星写真で見ると、畑と田んぼの混在した丘に見事なフルオープンのループ線が見えます。南から来て一回転半してまた南に向かうというかなり特徴的な形態です。上手に宣伝すれば世界的な鉄道名所になれるぐらいの見事な景観です。

マダガスカルの鉄道は1960年のマダガスカル独立以降はマダガスカル国鉄が運営していましたが、メンテナンス不足と老朽化で1990年ごろには存続が危ぶまれるほど荒廃していました。

そこでベルギーから資本協力を受けて2002年からマダレールという会社に民営化されました。マダガスカル政府も出資しているので正確にいうと第三セクター運営ですね。

民営化後は駅や線路に積極的にメンテナンスを入れて、ずいぶん綺麗になったそうです。関連記事はこちら。実際衛星写真で見ると、路盤がきれいに整備されているのが分かります。

旅客列車も一時絶滅しかけていましたが、現在はかなり復活してきています。ムラマンガ~トアマシーナ間は週1往復、ムラマンガ~アンビラ・レメイトソ間の区間列車が週1往復、支線へ行くムラマンガ~アンバトンドラザカ間の列車が週2往復です。

運賃はムラマンガ~トアマシーナ間で10,000Ar≒600円です。マダレールの公式ページはこちら

ところが肝心のループ線を含むアンタナナリヴォ~ムラマンガ間は、2014年に「安全性に重大な問題が生じた」とのことで旅客列車は再度運休になってしまいました。具体的に何があったのか調べてもわかりませんでしたが、これは痛いです。

  • もう一つの見どころは…

マダレールは一般の旅客列車のほかに、貸し切り列車用のミシュラン製のレールバスを保有しており、運休中の区間以外で現在でも乗ることができます。

このレールバスが実は世界の鉄道車両の中でも珍車中の珍車で、3軸ボギー台車にゴムタイヤという謎の仕様です。


はっきり言ってぶさいくですよね
車輪の騒音を防ぐ目的でゴムタイヤ製にしたのですが、車両重量を支えきれなかったため3軸ボギーにしたという、本末転倒じゃね?と突っ込みたくなる設計です。

しかもよくパンクするためにスペアタイアを積んでいるというから、なんだかいろいろ衝撃的です。

フランスで1930年代後半にぼちぼち使われていたらしいのですが、広まることなく1950年ごろには廃車になっていき、現存しているのは世界中でここだけだそうです。

くわしくはこちら


ループ線と珍レールバスの組み合わせは正直世界遺産狙えるのではないかと思えるのですが、運行されなければどうにもなりません。無事にループ線区間の運転が再開されることを祈りたいですね。

 

島のループ線シリーズも残すところあと2カ所です。
次回はスリランカ・セイロン島のループ線をご紹介します。

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