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2017/01/15

欧州㉑ブルガリア国鉄4号線シプカ峠 バルカン山脈を貫く双子ループ



  • マニア受けするループ線の国、ブルガリア

今回はブルガリアのバルカン山脈を貫く異色の連続ループをご紹介します。

ブルガリアは北海道ほどの面積の国ですが、ドヴリニーシュテ線のアヴラモーヴォの前後に4つ、クリスラに1つ、今回ご紹介する4号線に2つと計7か所ループ線があり、ヨーロッパではスイス、イタリアに次ぐループ線大国です。

しかもブルガリアのループ線はすべて現役で旅客列車が走っており、一つも廃止になっていません。これは割と地味にすごいかもしれません。

右から2番目の南北を結ぶ路線が4号線
ブルガリア国鉄4号線はバルカン山脈を横断してブルガリアの国土を南北に結ぶ幹線です。

1900年代の初頭から建設されていましたが、標高1200mのシプカ峠を越える山間部の工事に手間取り、予定よりもだいぶ遅れて1913年に開通しました。この最後の開通区間に二つループ線が作られています。ここはシプカ峠の上りと下りに一つずつループ線がある双子ループになっています。

  • 8の字ループと6の字ループ

この4号線の双子ループは南側のループ線をオスモルカータ、北側のループ線をシェストルカータと呼びます。日本語にするとオスモルカータは「8の字」、シェストルカータは「6の字」ですが、地図を見ると納得、まさに線路が6の字と8の字を描いています。

どちらも25‰勾配、曲線半径275mとスペック的にはこの時代の幹線級鉄道の標準スペックです。

オスモルカータの線路図
オスモルカータ「8の字」はゴッタルドのヴァッセンやレッチュベルグに見られるダブルヘアピンの一部が重なっている形状で、割とよくある形のループ線です。8の字の中央部分にラドゥンツィ駅が作られています。

ラドゥンツイ駅。山間にしてはかなり大規模な駅です

一方シェストルカータ「6の字」の方は見た感じ普通の4分の3回転ループ線なのですが、ひそかに世界トップレベルだったりします。何がトップレベルなのか、一発で正解できれば相当のループ線マニアだと思いますが、お分かりでしょうか。
こちらはシェストルカータ

実はシェストルカータはループ線の輪の部分の大きさが世界トップレベルなのです。輪の部分の全長が4.8kmあり、一周するだけで標高差を約90mを稼ぎます。舞浜のディズニーリゾートラインと同じぐらいの周回距離と言えば分かりやすいでしょうか。

バゾヴェッツ駅のハイキングコース案内版
これまでにも丘を巻いて線路が引かれているループ線をいくつかご紹介してきましたが、このシェストルカータもその一つに分類できます。ただ、ループ線の輪の中にある丘がえらい細長い形をしていたために、こんな特徴的な形状のループ線になってしまったのでしょう。

ちなみにループ線の輪の長さランキングで、一位は中国水柏線三重ループの一番上のループ線で約6.8km、二位はスペインのレオン=コルーニャ線にあるラ・グランハのループ線の約5.0kmです。シェストルカータは3位ですが、一周で稼ぐ標高差では25‰勾配のシェストルカータがトップです。

シェストルカータのちょうど線路の交差部分にバゾヴェッツというホームだけの無人駅があります。ここ一帯はブルガリアでは割と有名なハイキングコースになっています。

  • 旅客列車は豊富だけど・・・・

シェストルカータの交差部のトンネルだそうです。
トンネル上部を線路が通っているはずですがまるで見えません
そんな4号線ですが、首都ソフィアから黒海沿岸の主要な港町ヴァルナに向かう特急列車はバルカン山脈の北を迂回する2号線経由で運転されています。

4号線はマイナールート扱いで、ローカルの普通と快速だけが運転されています。貨物列車の方が多く走っているそうですが、それでも旅客列車は1日5往復10本あり、乗車するのはそれほど難しくありません。

どの列車も二つのループ線をセットで走ります。片道約2時間の行程です。首都ソフィアから5時間ほどかかりますので日帰りはちょっと難しいかもしれません。

ところが、残念なことにこの4号線のループ線は、線路の引かれている部分の地形と、森林が豊富なブルガリアの山並みの両方の要因で、どちらも致命的に視界が効きません。

乗ってるだけではループ線と気が付かず、ちょっとカーブが多いかなぐらいで通り過ぎるのではないかと思います。自分の通ってきた線路を車窓から見るというループ線の楽しみにも期待できません。

You Tube にオスモルカータ(8の字)の方の動画がありましたので引用しておきます。ラドゥンツイ駅から山を下る列車です。眺望の効かない様子がよく分かります。

ループ線は景色のために作られているわけではないので、これはしょうがないですよね。









次回は再び中国の連続ループ線をご紹介します。


 

2016/10/23

欧州⑱ブルガリア国鉄南バルカン線 クリスラループ 英雄の眠る町はずれのループ線


  • 戦後生まれの末っ子幹線

まちなかループ線の最終回はブルガリアの南バルカン線にあるクリスラループをご紹介します。

ブルガリアではナローゲージのアヴラモーヴォループをご紹介しましたが、今回ご紹介する南バルカン線はブルガリアの国土を東西に結ぶ3本ある幹線鉄道の真ん中を通る標準軌路線です。

ブルガリア国鉄路線図
開通年度が入っていますがなぜかドイツ語です
一番南の1号線はセルビアからトルコまで繋がっている国際路線で、オリエント急行も走っていました。1888年までに全通している古い路線です。

バルカン山脈の北を通って黒海に面した港町ヴァルナを目指す2号線も1899年に開通しています。1号線と2号線を補完するために作られたのが3号線で、バルカン山脈の南側を通っているので南バルカン線と呼ばれています。南バルカン線の開通で2号線経由よりも30㎞ほどヴァルナまでの距離が短縮されました。

南バルカン線は東西両方向から工事が進められましたが、ソフィアから130kmほど東にあるコズニッツア峠越え区間の工事が難しく、全通したのは第二次大戦後の1952年と比較的最近の話です。この峠区間にブルガリア最長のコズニッツアトンネルとクリスラ・ループが作られました。この区間が南バルカン線の最後の開通区間です。


  • ブルガリア人にとって無視できない小村

クリスラ・ループには二つ特徴があります。

一つは勾配15‰、曲線半径500mと非常に高規格で作らている点。第3の東西幹線を作るというブルガリア国鉄の意気込みが感じられます。

もう一つは、村落をきれいに避けて線路が引かれている点です。コズニッツア峠のトンネルを抜けてストリャーマ駅から13‰勾配で坂を下ってきた線路は、クリスラの町はずれの丘を村落とは反対の方向に輪を描く形でループし、村落の下をトンネルで抜けて川沿いに出ています。

クリスラの町を包むように線路が引かれています

地形図を見ると、クリスラの村落をまったく無視して別の場所に線路を通すか、あるいは村落を分断する形で中央に線路を貫通させれば、ループ線にする必要なかったのではと思えます。しかしあえて村落の近くに線路を通し、なおかつ村落自体に影響を与えないようにルートを選定した形跡がうかがえます。

1950年代はブルガリアはスターリン主義が幅を利かせていた時代です。民衆の意見など聞かぬ媚びぬ省みぬのバリバリの全体主義共産国家でした。

ところがクリスラは1878年に起こったブルガリア人のオスマントルコに対する反乱の中心となった町の一つでもあり、たかだか人口1500人の小村であっても素通りする訳にはいかなかったのではないかと思われます。クリスラにはこの反乱を記念した歴史博物館があり、反乱のリーダーの像が飾られているそうです。

ループ線が村落を避けて通っているため、クリスラの町から線路が見えるところはあまりありませんが、川をまたぐ石積みのクリスラ大橋は鉄道名所となっています。ループ線の高低差は100mです。


  • 減便中につきご注意を

2016年10月現在、南バルカン線にはブルガスまで直通する特急1往復、快速列車と普通列車が2往復ずつ、区間運転の普通列車1往復の計6往復がループ線区間を通過して行きます。いずれも朝と夕方以降の発着で昼間の列車はありません。

本来はもう少し列車があるようですが、現在は線路改良工事で一時的に列車が減らされているようです。昨年段階では特急4往復、快速と普通が7往復の計11往復あったそうです。

首都ソフィアから2時間ほどですので、ブルガリア観光ついでにソフィアから日帰りで見に行くこともできますが、列車の時間はよく調べて行かないとハマります。

You Tubeに前面展望ビデオがありました。最初の10分間はコズニッツアトンネルの中で、10分27秒にストリャーマ駅、12分40秒ぐらいからループ線を通過します。16分40秒に通過するのがクリスラ大橋です。





まちなかループ線シリーズは今回で終了です。

次回からは連続ループ線シリーズをご紹介していきたいと思います。既にいくつか紹介しているところもありますが、一つの列車が連続してループ線を通るところを紹介していきたいと思います。

まず次回は中国の連続ループ線をご紹介します。






2016/01/09

欧州③アヴラモーヴォ ナローゲージの生活ループ線


  • のどかな高原鉄道の実態は・・・

今回はブルガリア国鉄セプテンブリ・ドブリニーシュテ線のアヴラモーヴォ・ループをご紹介します。

ブルガリア南部、バルカン半島のほぼ中央のムサラ山のふもとの高原地帯を行くセプテンブリ・ドブリニーシュテ線は非電化の760mmゲージ路線で、セプテンブリからドブリニーシュテに向けて1921年から順次延伸していき、1945年に今の形になりました。125kmを約5時間かけて走るのどかな高原のローカル線です。

建設年代から見ておよそ見当がつくとおり、もともと軍事目的で「森を利用する」ために計画・建設された路線です。当方ブルガリア語はまるで分かりませんが、Google翻訳にぶち込むとそう出てきます。軍用の木材を調達するために、という意味でしょうか。直接の軍事輸送に使うのにナローゲージではちょっと心もとないです。

このムサラ山はバルカン半島の最高峰です。南麓東側はギリシャ領トラキアからエーゲ海に流れるメスタ川(ギリシャ名ネストス川)水域、南麓西側はギリシャトルコ国境を流れるマリーツァ川水域です。両者の分水域を超えるセプテンブリ・ドブリニーシュテ線は、のどかな見た目とは裏腹に、標高差1000mを走る本格的な山岳路線でもあります。ちなみにムサラ山の北、首都ソフィア側はドナウ川の水域です。


  • ナローゲージと侮るなかれ
アヴラモーヴォループは起点セプテンブリから60kmのスヴェタペトカ駅から始まります。セプテンブリの標高は200m、スヴェタペトカの標高は800m登った1000mです。ここまでもかなりな勾配です。甲府から野辺山まで中央本線小海線で行くとちょうど距離60km、標高差800mぐらいですのであんな感じの上りが続くのでしょう。

そこから線内最高点のアヴラモーヴォ駅までのループ線は全長10km、標高差230m、最急勾配30‰と本格的です。


760mmゲージは軽便鉄道と日本語に訳された影響で、どちらかというと簡易な乗り物という印象を受けますが、ここはそんな間違った概念を軽く吹き飛ばしてくれます。巨大なダブルヘアピンの途中でループを二つ持つ世界でも有数の大規模なループ線です。

機関車がDD54に似ています

冬のアヴラモーヴォ駅の交換風景。右側通行なんですね。
ナローゲージの鉄道は手軽に敷設できる反面、その線路規格の低さが災いしてモータリゼーションの波に飲まれて公共輸送機関から脱落するケースが世界中で見られますが、ここでは立派にローカル輸送の一翼を担っているようです。

旅客列車はH28年1月現在一日4往復8本あり(この他にループ線まで行かないセプテンブリ~ベニングラード間の区間列車が1往復あり)、ナローゲージとは思えない立派なディーゼル機関車が客車を4~5両引いて走っています。貨物列車も少数ですが走っているようです。また、団体で予約すると蒸気機関車牽引のチャーター列車を走らせてくれるというサービスもあります。これはなかなか魅力的ですね。

  • もうひとつの世界トップレベル

緑色の蒸気機関車のチャーター列車
セプテンブリ・ドブリニーシュテ線はアヴラモーヴォを頂点にその先西側は下り坂になりますが、下り側にも2連のループ線(スモレーヴォ・ループ)があります。

こちらはアヴラモーヴォループとは対照的に極めて小規模なもので、特に下側のループは760mmゲージの小回りを生かした半径80m全長600m弱の非常に小さいループ線です。

これはおそらく世界最小規模クラスだと思います。最大クラスと最小クラスを一度に体験できてお得感がありますね。

ブルガリアと言えばコマーシャルの影響でヨーグルトしか思いつかない人が多いと思いますが、このセプテンブリ・ドブリニーシュテ線は鉄道ファンには様々な面でとても魅力的です。

動画がみつかりました。スモレヴォの上側ループです。 →こちら(ただし激重です)。

ただ、あまりの知名度の低さに、この路線に乗られた日本の鉄道ファンの方は極めて少ないのが残念です。(かろうじて現地在住の日本人の方の乗車記をみつけました →こちら






次回は有名どころでスイス・ゴッタルド線をご紹介します。