2016/06/17

アジア⑥スリランカ デモダーラ・ループ ループ線はちょっと残念だけど…

  • 歴史と自然満載、インド洋の真珠

島にあるループ線シリーズ、ラス前はスリランカ国鉄のデモダーラ・ループDemodara Loopをご紹介します。

緑の線がMainLine
スリランカ・セイロン島はインドの東の海上にある南北約450km、東西約200km強の北海道より一回り小さい島です。

南半分は標高2000mを超える高山地帯で、海からの湿った風を受けて1年に2回雨季があります。日本の梅雨と違って短時間に集中的に降るのが特徴です。なお、セイロンとは欧米人の呼び方らしいので、ここではスリランカに統一しておきます。

スリランカは16世紀はポルトガル領、17世紀はオランダ領、18世紀から第二次世界大戦後までイギリス領でした。タイ・ミャンマーと並ぶ仏教国で、豊富な雨によって古代からいろいろな農作物が採れていました。

人口は2000万人で世界の島を人口順に並べると第7位だそうです。ちなみにトップ3はジャワ島・本州・グレートブリテン島です。

人口が多くて農業が盛んで山がちな国土で国外輸出がメイン、と鉄道輸送が威力を発揮しやすい条件が揃っており、イギリス植民地時代の1864年から鉄道輸送が始まっています。山で採れる紅茶や天然ゴムなどの農産物を港まで運ぶことを主眼に鉄道が敷設されていきました。そのため首都コロンボから南部山岳地帯の中心都市バドゥーラ間までが本線MainLineとなっています。

これは先に開通していたインドのラーメシュワラム・パーンバン海上橋
なかなかカッコいいです(天気が良ければ)

スリランカの鉄道は地域的にインドと結びつきが強かったため、インドと同じ1676㎜ゲージで建設されました。広大なインドと比べると狭い山岳地帯を走るスリランカではブロードゲージの利点を活かしきれているとは思えませんが、開通当初からインドと海上鉄道橋で直結する計画があり、実際に1940年代の初めごろまで着々と工事が進んでいました。

そのおかげで世界でも珍しいブロードゲージのループ線が作られています。1676mmゲージのループ線はこことパキスタンのカイバル峠にしかありません。



とりあえず両国間の連絡は今のところフェリー輸送に頼っていますが、2000年代になってスリランカの政情が安定すると、再びインドスリランカ鉄道橋の建設話が持ち上がってきています。

  • 眺望への過度の期待は禁物

北に向かって下り坂です。西側は高さ300mの絶壁です
さて、デモダーラ・ループは島の南の中央部の山岳地帯にあります。

本線MainLineはスリランカの山岳地帯を縦断する路線で、コロンボから山に向かって順次開業していき、1924年に最後のバダラウェラ~バドゥーラ間が開業していますが、この最後の開通区間にループ線が作られました。

尾根伝いに下ってきた線路が、山のまわりをぐるっとまわってトンネルでくぐるシンプルなループ線です。ループ線が自線をトンネルでくぐっているちょうど真上がデモダーラ駅です。

本線MainLineは全長約290kmの路線ですが、途中のパティポーラまでの230kmが上り坂で、標高1900mの峠をトンネルで越えると残りの60kmは長い下り坂になります。

ループ線のあるデモダーラはコロンボから278km標高912mですので、50kmで1000mの高低差を下るハードな連続勾配です。ループ線のあるデモダーラから先も20‰の連続勾配が続いており、終点のバトゥーラは標高650mまで下がったところにあります。ループ線の部分の勾配は22.7‰です。


ループ線の輪の中心に丘や山があるループ線はこれまでにもいくつかご紹介してきましたが(例えばオーストラリアのベサングラスパイラルとか、台湾の阿里山鉄道など)、ここデモダーラループは割と高い山を巻いてループすることと、熱帯の成育力の強い樹木に囲まれていることから、ぶっちぎりで視界が効きません。

ここを通られた方のブログを読むと「同じ方向のカーブが続くのでループ線だとかろうじて分かる」状態だそうです。コロンボから乗ってくるとループの最後のトンネルの手前でちらっとデモダーラ駅が見えるとのことです。⇒こちら

駅から山道を30分ほど歩くとループ線全体が見渡せる場所があり、そこからの写真はネット上でよく見つかりますが、残念ながら車窓からの眺めには期待できないようです。

  • 活気ある鉄路はいいものだ
スリランカでは道路事情が良くないこともあって現在でも鉄道が地域間輸送の主役です。ループ線を通る旅客列車は急行3往復、夜行1往復、キャンディからの区間列車が1往復の計5往復10本あります。首都コロンボからループ線のあるデモダーラまで約9時間30分です。

名物9連レンガ橋Nine Arch Bridgeを渡るウダラータマニケ号
3往復の急行列車のうち2往復にはウダラータ・マニケ(ウダラータの娘)号、ポディ・マニケ(小さな娘)号という愛称がついており、中国製の青い新型客車で運行されています。ウダラータはバドゥーラ周辺の地方を指す旧称だそうです。日本の旧国名みたいなもんでしょうか。

愛称のないもう一本の急行列車には展望車とビジネスクラス車が連結されていて、展望車はラジャダハニ社、ビジネスクラス車はエキスポレイル社という民間会社が運営しています。新幹線のグリーン車だけをJTBのような旅行会社が貸切っているような感じだと思いますが、設備も整っていてこれは楽しそうです。車内で本場の紅茶が飲み放題というのも魅力的です。

また、運賃は列車種別にかかわらずどのクラスの車両に乗るかで決まります。コロンボ~バドゥーラ間は3等車400LKR(スリランカルピー)≒300円、2等車600LKR≒450円、1等車1000LKR≒700円です。 ラジャダハニ社の展望客車はスナック付きで1750LKR≒1300円、エクスポレイル社のビジネスクラスは食事付で2400LKR≒1800円です。詳細はこちら(英語)

日本人的な感覚からすると金額的にはどれも手頃な値段です。2等車・3等車は予約なしで乗れますが、かなり強烈な混雑を覚悟しないといけないそうです。

スリランカではループ線の車窓はイマイチですが、鉄道の旅はいろいろ楽しそうですよね。




次回は島のループ線シリーズの最終回、イタリア・シチリア島のループ線をご紹介します。




0 件のコメント :

コメントを投稿