- フレンチアルプスへの回廊
ループ線は一般的に人里離れた山の中にありがちです。中には雲への列車 Tren a la Nuebesのように、一番近くの町まで100km以上という場所にあるものも珍しくありません。一方で人々の暮らす街のすぐそばにループ線がある場合もあります。今回からしばらくそのような町のそばにあるまちなかループ線を紹介していきたいと思います。
まちなかループ線はヨーロッパに多いので、しばらくヨーロッパ中心の紹介になりますが、いろいろ面白い町とループ線が出てきますのでご期待ください。
さて、今回はフランスの南、スイスとの国境近くを走るタランテーズ線のムーティエ・ループをご紹介します。
ここはモンブランの麓の世界的に有名なスノーリゾートで、一帯にはたくさんスキー場があります。
1992年に冬季オリンピックが開かれたアルベールビルはモンブランへの入り口にあたります。志賀高原に対する湯田中と言ったところでしょうか。
タランテーズ線はアルベールビルでスィッチバックしてイゼール川の谷間に入り、ムーティエを通ってブールサンモーリスまでを結ぶ80kmの路線です。アルベールビルからの60kmで標高差470mを登ります。
イゼール川は比較的広い谷間をゆったり流れるのですが、ムーティエの町の前後10kmほどの間だけ2000m級の山塊にはさまれた峡谷となっています。
ムーティエの町は人口4000人ほどの静かな田舎町ですが、冬の間は付近にたくさんあるスキー場への入り口としてヨーロッパ各地から人が集まって賑わうそうです。
タランテーズ線は山とイゼール川に挟まれたムーティエ駅をすぎるとそのままループ線に突入します。
3本のトンネルでループ線を一回りして標高を稼ぎ、またイゼール川沿いに北上していきます。ムーティエ駅を出るとすぐにループ線で、町から15分も歩けばループ線のそばに行けます。
ループ線区間の開通は1913年、全長3.7km、標高差70m≒18.5‰のコンパクトな形状です。交差するところがトンネル内にある典型的な渓谷型ブラインドループ線です。
- とりあえず冬に列車が多いのは分かった
ムーティエ・ループの特色はなんといってもTGV・タリス・ユーロスターという高速特急列車が通過していくことです。TGVは年間を通じて毎週末運転、ユーロスターとタリスはスキーシーズンの週末運転です。スキーシーズンにはロンドン、アムステルダム、ブリュッセルなどヨーロッパ各地から直通列車が走ります。
ループ線の手前ラ・バティ付近を走るタリス こちらからお借りしました |
この区間の時刻表がものすごく分かりづらくて、正確な本数が拾いきれませんでした。曜日指定運転と曜日指定運休がある上に、平行して走るバスの時刻も一緒に書いてあったりして、さすがにギブアップです。
こちらはムーティエ駅のユーロスター |
- 全部雪のせい?
ループ線の大部分がトンネル内で見通しが効かないのも理由の一つでしょうが、スノーリゾートとループ線という組み合わせ自体あまり相性がよくないのかもしれません。
ムーティエ駅 正式にはムーティエ・サラン・ブリード・リ・バン駅という長い名前です |
とは言え、フランスが世界に誇るTGVがループ線を走るのですから、もう少し注目されてもいいのではないかと。個人的には山形新幹線が旧赤岩駅でスィッチバックするぐらいのインパクトがあると思うのですが…。(かろうじて前面展望の動画がありました→こちら。見事に視界が効かないのが分かります)
パリから4時間半、ロンドンから8時間、ジュネーブからバスで1時間ですので何かのついでに一度寄ってみたいと思っていますが、なかなか機会がありませんね。
次回はフランスからもう一か所。ロレーヌ地方のオーダン・ル・ティッシュにあるまちなかループ線をご紹介します。
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