2016/01/09

欧州③アヴラモーヴォ ナローゲージの生活ループ線


  • のどかな高原鉄道の実態は・・・

今回はブルガリア国鉄セプテンブリ・ドブリニーシュテ線のアヴラモーヴォ・ループをご紹介します。

ブルガリア南部、バルカン半島のほぼ中央のムサラ山のふもとの高原地帯を行くセプテンブリ・ドブリニーシュテ線は非電化の760mmゲージ路線で、セプテンブリからドブリニーシュテに向けて1921年から順次延伸していき、1945年に今の形になりました。125kmを約5時間かけて走るのどかな高原のローカル線です。

建設年代から見ておよそ見当がつくとおり、もともと軍事目的で「森を利用する」ために計画・建設された路線です。当方ブルガリア語はまるで分かりませんが、Google翻訳にぶち込むとそう出てきます。軍用の木材を調達するために、という意味でしょうか。直接の軍事輸送に使うのにナローゲージではちょっと心もとないです。

このムサラ山はバルカン半島の最高峰です。南麓東側はギリシャ領トラキアからエーゲ海に流れるメスタ川(ギリシャ名ネストス川)水域、南麓西側はギリシャトルコ国境を流れるマリーツァ川水域です。両者の分水域を超えるセプテンブリ・ドブリニーシュテ線は、のどかな見た目とは裏腹に、標高差1000mを走る本格的な山岳路線でもあります。ちなみにムサラ山の北、首都ソフィア側はドナウ川の水域です。


  • ナローゲージと侮るなかれ
アヴラモーヴォループは起点セプテンブリから60kmのスヴェタペトカ駅から始まります。セプテンブリの標高は200m、スヴェタペトカの標高は800m登った1000mです。ここまでもかなりな勾配です。甲府から野辺山まで中央本線小海線で行くとちょうど距離60km、標高差800mぐらいですのであんな感じの上りが続くのでしょう。

そこから線内最高点のアヴラモーヴォ駅までのループ線は全長10km、標高差230m、最急勾配30‰と本格的です。


760mmゲージは軽便鉄道と日本語に訳された影響で、どちらかというと簡易な乗り物という印象を受けますが、ここはそんな間違った概念を軽く吹き飛ばしてくれます。巨大なダブルヘアピンの途中でループを二つ持つ世界でも有数の大規模なループ線です。

機関車がDD54に似ています

冬のアヴラモーヴォ駅の交換風景。右側通行なんですね。
ナローゲージの鉄道は手軽に敷設できる反面、その線路規格の低さが災いしてモータリゼーションの波に飲まれて公共輸送機関から脱落するケースが世界中で見られますが、ここでは立派にローカル輸送の一翼を担っているようです。

旅客列車はH28年1月現在一日4往復8本あり(この他にループ線まで行かないセプテンブリ~ベニングラード間の区間列車が1往復あり)、ナローゲージとは思えない立派なディーゼル機関車が客車を4~5両引いて走っています。貨物列車も少数ですが走っているようです。また、団体で予約すると蒸気機関車牽引のチャーター列車を走らせてくれるというサービスもあります。これはなかなか魅力的ですね。

  • もうひとつの世界トップレベル

緑色の蒸気機関車のチャーター列車
セプテンブリ・ドブリニーシュテ線はアヴラモーヴォを頂点にその先西側は下り坂になりますが、下り側にも2連のループ線(スモレーヴォ・ループ)があります。

こちらはアヴラモーヴォループとは対照的に極めて小規模なもので、特に下側のループは760mmゲージの小回りを生かした半径80m全長600m弱の非常に小さいループ線です。

これはおそらく世界最小規模クラスだと思います。最大クラスと最小クラスを一度に体験できてお得感がありますね。

ブルガリアと言えばコマーシャルの影響でヨーグルトしか思いつかない人が多いと思いますが、このセプテンブリ・ドブリニーシュテ線は鉄道ファンには様々な面でとても魅力的です。

動画がみつかりました。スモレヴォの上側ループです。 →こちら(ただし激重です)。

ただ、あまりの知名度の低さに、この路線に乗られた日本の鉄道ファンの方は極めて少ないのが残念です。(かろうじて現地在住の日本人の方の乗車記をみつけました →こちら






次回は有名どころでスイス・ゴッタルド線をご紹介します。

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