2015/12/16

アジア①韓国咸白線 ここにも微妙な増設ループが


  • 韓国一の山岳路線

さて、今回は韓国中央部の太白(テベク)山脈を横断する咸白線のループ線をご紹介します。

韓国中央部を東西に横断する太白本線には、その途中山越えの手前で本線に寄り添うように分岐する咸白線という支線があります。この咸白線の咸白(ハムベク)駅と鳥洞(ジョドン)信号場間にループ線があり、見た感じ増設ループ線のような形態となっています。

太白山脈は石炭が豊富で、朝鮮戦争後韓国の経済発展に伴って鉄道が順次延伸されてきました。咸白(ハムベク)は鉱山の町で1957年にソウル方面堤川(ジェチョン)から鉄道が開通しています。

開通当初は起点の堤川から咸白までを咸白線と称しており、咸白駅は「韓国の石炭産業の中心地」として賑わったとwikipediaに書いてあります。一方、1963年に嶺東本線が全通し、東海岸沿岸部と直通列車が走るようになると、既存の栄州(ヨンジュ)経由では遠回りすぎるため、首都ソウルへ直行できる太白堤川経由のルートがにわかに注目されるようになります。

  • 支線の方がいつのまにかメインに


1966年、旌善(ジョンソン)線が一駅手前の礼美(イエミ)から分岐して太白方面へ延伸された際、礼美から咸白の間は分離されて、咸白線は行き止まりの盲腸線となります。


さらに1973年、旌善線が太白まで延長されて嶺東本線と直通するようになると、もともと支線だった旌善線が太白本線を名乗るようになりました。

本線から外れてしまった咸白線ですが、咸白駅が石炭産業の中心として引き続き賑わっており、盲腸線の終端駅となってもそれなりの運行本数が残っていたようです。

咸白駅から長大トンネルで太白本線につなぎ、ルート短縮と勾配緩和を一挙に実現する壮大な計画もありましたが、技術的にも工期的にも実現しませんでした。

礼美から分岐する太白本線(旧旌善線)は30.3‰で韓国随一の急勾配区間ですが、もとはといえば支線規格だったことを考えれば得心が行きます。

1976年末に咸白駅と太白本線を繋ぐループ線のトンネル(ハムベク第1トンネル)が開通し、再合流する地点に鳥洞信号場が設けられ、この区間の複線運用が始まります。この咸白~鳥洞信号場間の勾配ははっきり書いてある資料が見当たりませんでしたが、地形図から計算すると23‰程度だと思います。

  • 賑わいは過去の話

ところがハムベクトンネル開通とほぼ同時に太白本線が電化されて事情が変わってきました(これもはっきり分かりませんでしたが、ハムベクトンネルは開通当初から電化されていたようです)。もともと礼美~鳥洞信号場間の急勾配区間は3km程度と短かく、高出力の電気機関車でそのまま上り坂に突っ込む方がハムベクトンネル経由で距離を迂回するよりも早いという事態が発生してしまいました。

咸白駅。後ろに見えるのは太白本線の貨物列車
 その結果、韓国鉄道の複線が単線並列式であることもあって、当初から咸白駅に停車する列車、及び対向列車と行き違いする列車だけが咸白線ハムベクトンネルを経由するというダイヤが組まれたようです。なお、文献によって上り坂となる東行貨物列車は全部ハムベクトンネルを迂回したと書いているものもあり、どちらが正しいのか不明です。

韓国一と言われた咸白鉱山は80年代中盤に閉山となり、減らされつつも残っていた咸白駅停車の旅客列車も2007年で廃止され、現在ではすっかり咸白線全体が行き違い設備の待避線のようになっています。

 もともと幹線クラスの運行本数があった咸白線にとってはあまりに寂しい現状です。



  • 乗れるかどうかは運次第

現在、旅客列車のダイヤを見ると礼美~鳥洞の駅間で交換している列車が1日1本見られます。この列車は咸白線経由の可能性が高いとは思いますが、なんとも言えません。貨物列車は結構な頻度で走っており、何本かはループ線を経由しているとのことです。その他ダイヤが乱れた時や臨時列車が走るときなど、このループ線を使って行き違いを処理しているとのことです。

礼美駅の分岐。左が太白本線、正面が咸白線
 ここのループ線はループの大部分がトンネル内で、ループを通らずに断崖を登っていく太白本線の方が景色が良いそうです。「普段通らない谷底の線路(咸白線のこと)を通った。」と書かれている方もいらっしゃいます。それ、超貴重なループ線通過体験なんですけどね・・・・。



ループ線自体少し地味で知名度低いのですが、こちらのブログ(韓国語)で素晴らしい現地写真が公開されています。





次回は増設ループ線の最終回、中国宝成線をご紹介します。

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