2016/04/10

オセアニア②ニュージーランドその1ラウリムスパイラル 火山に挑むループ線

  • 大自然にいだかれたループ線

さて、今回からしばらく「島にあるループ線」をご紹介していきます。

まず初回はニュージーランド北島のラウリム・スパイラルRaurimu Spiralです。

ニュージーランドは北島と南島に分かれていますが、二つ合わせると南北約1500km、東西約200kmとちょうど本州よりも少し大きいぐらいの大きさになります。

人口は南島と北島合わせて約450万人で、 日本でいうと神奈川県の人口の半分ぐらいしかありません。神奈川県民の半分が本州に散らばって住んでいると考えると、とてもゆとりのある国土だということが分かります。人間よりも羊が多いというのはあながち間違いでもなさそうです。

ご存じのとおりニュージーランドは旧イギリス領でしたが、早くから自治領として実質的に独立国となっていました。イギリスへの農畜産物、林産資源の輸出が盛んに行われ、鉄道も1860年代から順次開業していっています。

当初はいろいろな軌間が混在して建設されましたが、1870年代以降は日本と同じ1067mmゲージに集約されていきました。

現在はキウィレールというカジュアルな名称ですがれっきとした国有企業が運営しています。ニュージーランド国鉄の運営と思っておいておおむね間違いありません。

  • 駆け上れ、溶岩台地

左がオークランド方面。右に向かって上り坂です
北島のオークランドとウェリントンの二大都市を結ぶ北島本線(North Island Main Trunk)は名前のとおり北島を南北に貫通する大動脈で、1908年に全通しました。

北島を南北に縦断する場合、中央部にある標高1000mの火山高原をどこかで越えるか、海沿いを延々と迂回するかの二択なのですが、北島本線はループ線によって北島の最高峰、ルアペフ山の麓の溶岩台地を最短距離で突っ切るルートを選びました。

ラウリムスパイラルはその溶岩台地への上り口に位置しています。付近の小さな川の流れとはまったく関係ない方向に上っていく典型的な丘陵型のループ線ですが、溶岩台地にできた段差を上っていることを考えるとそれも納得です。

上の地図とは逆向きで右上がオークランド方向。左下に向かって上り坂
全長約5km、標高差200m、最急勾配は19.2‰とスペック的にはコンパクトな部類に属しますが、ラウリム・スパイラルは見かけのスペック以上に面白い線形をしているのが特徴です。

よく見てみると、ループ線の前後で何回もヘアピンターンを繰り返して高度を稼いでいます。完成当時には鉄道土木技術の傑作と言われたそうですが、確かに巧みなルート選定だなと感心します。

ニュージーランドの豊富な森林が裏目に出て、ループ線上は木々に遮られて車窓からの見通しが効かないのが多少残念ではあります。インターネット上でも車窓の写真がほとんど見当たらないところを見ると、ループ線独特の「さっき自分が走ってきた線路」が車窓から見えるところがほとんどないのかもしれません。

  • ギリギリ残る旅客列車
ニュージーランドは前述のとおり人口が少なく、都市間輸送の旅客列車はほとんど壊滅状態ですが、北島本線にはThe Northern Explorerという観光列車がかろうじて残っており、現在もラウリムスパイラルを列車に乗って通過することができます。

1週間に3往復、ウェリントン行きとオークランド行が交互に走る形になっています。

2016年4月現在、月木土はオークランド発ウェリントン行、火金日はウェリントン発オークランド行が運行されます。ウェリントン行きがループ線を登る方向、オークランド行が下る方向です。どちらも所要時間約11時間の昼行便です。公式ページはこちら

観光列車とされていますが、途中駅での乗降も可能で一般旅客列車とさほど違いはありません。



北島最高峰ルアペフ山とThe Northern Explorer号
また、The Northern Explorerの他に、民間の団体が貸切り列車を仕立てたクルーズ列車がたまに走ることがあります。

このような列車にも申し込めば乗れるようですが、年に1回とかですのでなかなか日本から乗りに行くにはタイミングが合いづらそうです(昨年走った貸切り列車の案内ページがこちら)。

とは言え、さすがにこの人口ではいつまで旅客列車が残っているか予断を許しません。実際10年ほど前までは、シーズン中毎日夜行便と昼行便の2往復走っていたのですが、現在の運転本数まで減便されています。ここも機会のあるうちに乗っておきたいところです。




さて、ニュージーランドにはラウリム・スパイラルの他に森林鉄道由来の軽便線のループ線が2か所あります。次回はその2か所を簡単にご紹介しておこうと思います。

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