2015/11/16

欧州①タンド線 歴史ある偉大なローカル線

  • タンド線概要
タンド線地図 左下がフランス領です。
ヨーロッパはさすが鉄道発祥の地だけあって、古くから鉄道網が形成され、険しい地形を克服するループ線もいくつも作られました。その中から今回はタンド線を中心に見ていきましょう。

タンド線は地中海沿岸のイタリアとフランスの国境の町ヴェンテミリアから、イタリア中部工業地帯クーネオまでの全長100km弱の線です。起点も終点もイタリア国内ですが、峠を越えてしばらくの間フランス領を通る国際ローカル線です。

海沿いのヴァンテミリアから線内の最高点タンドトンネル内までの約60kmで標高差1040mを上ります。25‰勾配が続く短距離決戦型山岳鉄道で、約2時間30分の行程中4ヶ所のループ線を通ります。

短時間にたくさんのループ線を通り抜けようと思えば、スイスイタリア間を特急で走り抜けるか、タンド線に乗るかどちらかだろうと思います。なお、タンド線の運行はフランス領内も含めて全区間をイタリア国鉄トレニタリアが担当しています。

  • 政治経済に翻弄される宿命
仏伊の国境を超える国際線という性格上、タンド線は歴史上何度も国際政治に翻弄された悲劇の路線でもあります。

1912年に工事が始まった途端、第一次世界大戦で工事が中断され、1928年の開通後も世界情勢がきな臭くなり、わずか10年で国境を超える列車は休止されてしまいます。

第二次世界大戦が始まると今度は国防上の理由で線路自体をイタリア軍が破壊してしまいました。全線が復旧されたのは戦後30年もたった1979年でした。また、イタリアの敗戦によって国境が変わり、4駅がイタリア領からフランス領に変更されています。上記の地図は戦前のもので、よく見ると現在とは国境が異なっています。

近年でも経済危機による合理化の名目で運転本数が減らされており、2015年現在クーネオからヴェンテミリアの全線を走る列車は1日2往復だけとなっています。2011年版の時刻表では9往復、2013年版では8往復の列車が走っていたのに随分無茶な削減をしていますね。
※2017年9月から2018年4月までトンネルと鉄橋の改修工事のため、ヴェンティミリア発着便は途中のリモーネまで全便バス代行となってしまっています。一応、2018年5月からは列車が復活する予定ですが、大丈夫でしょうかね。少し心配です。時刻表は→こちら(2018年4月追記)


フランスからイタリアへの移動の主流は戦後整備されたスイス経由アルプス越えの道路や鉄道にほとんど移っており、今後このタンド峠を越える路線の重要度が上がる見込みはあまりありません。
  •  タンド線のループ
タンド線のループはクーネオから見て登りに1つ、下りに3つあります。個別にループ線の名前は付いていないようですので、このブログでは便宜的に最寄りの駅名で呼ぶことにします。クーネオ側から順番にヴェルナンテループ、タンドループ、サン・ダルマループ、フォンタン・サオルジュループの4つです。

これらのループの特徴として、4つともほぼ完全な360度ループであることと、立体交差する地点がトンネル内にあること(ブラインドループ)があげられます。ブラインドループばかりなのでなかなか構図的に写真撮影しづらいらしく、ループ全景を見渡すような写真があまり落ちていません。それぞれのループの概要を下にまとめます。

①ヴェルナンテ
線路配置からおそらくヴェルナンテループでしょう
ヴェルメナーニャ川右岸のシンプルなループ。クーネから見て登りです。このループだけは現在もイタリア領です。

②タンド
国境を越えてクーネオから見て下り。ラローヤ川左岸をループで降りたあと対岸に渡ります。戦前はイタリア領、現在はフランス領です。

③サンダルマ
ループのほとんどがトンネル内。ループ終了直後にサンダルマ・デ・タンド駅。駅を出るとダブルヘアピンでさらに高度を下げます。ここのループ+ダブルヘアピンが線内のハイライトでしょうね。ここも戦前はイタリア領、現在はフランス領です。
この写真はおそらくフォンタンサオルジュループだと思われます

④フォンタン・サオルジュ
ラローヤ川右岸でループしたあと対岸に渡ります。ここは戦前からフランス領でした。  













蛇足ですがタンド線を走るディーゼルカーはめちゃくちゃスタイリッシュでかっこいいですね。さすがイタリア製です。トレニタリアの「ミヌエット(minuetto)」という車両だそうです。どことなく北陸線を走るサンダーバードに似ています。なお、まったく同じデザインの電車もあります。

次回は北米カナダのループ線をご紹介します。


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