- はるかなる天空へ続く鉄路
青蔵線は世界最高所を走る鉄道として有名ですが、その成り立ちは極めて政治的な背景によるものでした。
1949年中華人民共和国が成立すると1950年にチベットに侵攻し、中華人民共和国領土であると宣言し、漢民族が大量に入植して人数でチベット人を圧迫していきます。その流れで着工されたのが青蔵線です。結局のところ兵士と入植者をチベットへ送り込むのが最大の建設目的だったことになります。
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高速鉄道を5年ぐらいで作ってしまう中国では、これは異例の長期プロジェクトだったと言えるでしょう。当初は軍用輸送専用でしたが1984年に一般旅客営業を開始しています。
なお、世界最高所を通る「天空の鉄道」として有名な海抜4000m以上の超高地区間は一期の開通区間内にはありません。海抜4000m超区間は2001年着工2006年開業の第二期区間ゴルムド~ラサ間です。こちらは延長1160kmと第一期区間よりも距離が長いにもかかわらず着工から5年で開通しています。
- 富士山よりも高い大規模ループ線群
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これが旧関角ループ線群です。へアピンターン群のちょうど中央にループ線があり、曲線半径は300m、勾配は15‰でした。ループ線は直近の駅名から二郎ループ線(二郎螺旋展線)と呼ばれていました。
ループ線と7か所のヘアピンターンが合わさった世界的にも大規模なループ線群でしたが、このループ線群は世界最高所にあるループ線でもありました。ループ線群の全体が富士山よりも高いところにあったと聞くとそのスケールに驚きます。
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鉄道写真撮影だけでも高山病になりそうで心配になりますし、加えて一番近くの町まで軽く100kmはある人跡未踏の辺境の地だったことも重要です。事故で死んでも誰にも気づいてもらえないところでした。鉄道写真のためにかなり本格的な登山装備が必要な、割と真剣に命がけの撮影だったと思われます。
- 関角、再見!
冬の写真がほしい、と思ったけどよく考えると無理な注文ですね こちらからお借りしました |
さらに輸送強化を図るべく、第二期工事完成前の2005年から輸送力増強工事を実施してゴルムドまでの区間を複線電化することになりました。
この時、旧関角峠の部分は全長34㎞の新関角トンネルを建設して旧関角ループ線群を一気にバイパスしてしまうという中国らしい大胆な計画となりました。
新線の開通で30㎞距離が短くなり、所要時間が2時間短縮されました |
この青蔵線、現在はチベット地区への一大幹線となっており、旅客列車が北京、上海、広州、重慶、蘭州と中国各地から1日5往復走っています(重慶発着と成都発着は隔日交互運行、蘭州発着は隔日で西寧止まり)。西寧からゴルムドまで約7時間、ゴルムドからラサまで約13時間かかりますので、全線を日中に乗ろうと思うと途中駅で一泊必要になります。
- 今なお開発が続くチベット
また、チベット地区では鉄道建設のビックプロジェクトが目白押しです。
2017年11月現在、ゴルムド~コルラ線、ゴルムド~敦煌線がそれぞれ建設中です。タクラマカン砂漠を貫いて線路を敷くとかスケールでかすぎです。一般旅客営業をすぐ開始するかは分かりませんが、どちらもあと数年で開通する段階だそうです。
東洋のウユニ、ツァカ湖 ただし本家よりも晴天率が著しく低いため青空の日に当たるには相当な強運が必要だそうです |
またラサ~シャングリラ~大里~昆明の路線も建設中です。
地図上での距離は近くても一切の交通が断絶されていたチベットと雲南省・四川省が鉄道で結ばれるとどういう変化がおきるのか。
長江、メコン川、サルウィン川の三大河川が並んで流れる三江併流地域をどのようなルートで鉄道を建設するのか、興味は尽きません。ここも途中のラサ~林芝間400kmが2021年に開通予定です。
青蔵線自体もロマンあふれる鉄道ですが、今後しばらくチベット地区の鉄道網の発達は見逃せません。
有名なループ線シリーズは今回で終了です。
世界のループ線を紹介して丸2年、だいぶ残りが少なくなってきました。しかも有名なところをまとめて紹介してしまったのでマイナーどころばかり残ってしまいました。これはちょっとマズかったかもしれません。
次回からは残りのループ線をランダムにご紹介していきます。まずはヨーロッパなのかアジアなのか微妙なところにあるロシアのループ線をご紹介します。