- 歴史と文化とビーチリゾートの島
今回は地中海のサルデーニャ島のループ線2カ所をご紹介します。
サルデーニャ島は地中海に浮かぶ南北約270㎞、東西約110㎞の島です。九州から佐賀長崎のでっぱりを取ったのとほぼ同じくらいの大きさで、ビーチリゾートで有名です。超おおざっぱに言って島の左半分西側は平地で、右半分東側は標高1000mクラスの山岳地帯です。
黒線がトレニタリア線 緑が950mmゲージのARST線 |
ですので、場所的にはイタリアのはずれですが、イタリアの歴史にとっては重要な島でもあります。イタリア本土よりもアフリカの方に近い地理的な関係から、古代エジプトのフェニキア人の言葉やスペイン語の影響を受けた本土のイタリア語とはかなり異なるサルデーニャ語が使われているそうです。
島の中央部の山地から石炭が採れたためサルデーニャ島には早くから鉄道が引かれました。島の南端アフリカ側のカリアリから北東端イタリア本土側のオルビア間を繋ぐのがサルデーニャ島の一番の幹線です。九州の鹿児島本線みたいなものですね。1883年とかなり早い段階で全通しており、今では高速振り子気動車が走る1435mmゲージのトレニタリア(イタリア国鉄)線になっています。
それとは別にサルデーニャ鉄道という地方鉄道会社が運営する950mmゲージの狭軌鉄道も開通していきました。以前にも少し触れましたが、950mmゲージはイタリア独特の狭軌ゲージです。
現在はサルデーニャ地域交通会社(ARST)が路線バスなどと一緒に運営しています。このARSTの運営する路線は主にサルデーニャ島の山間部を結び、景色の良い路線が多数あります。そのARST線の路線にループ線が2か所あります。
- 規模だけではないループ線の面白さ
ラヌゼイの町とループ線。アルバタクス発の列車の場合、 常に進行方向左側が谷になります |
ピチュエクック・スパイラル。こちらのページからお借りしました。 |
ここはラヌゼイ駅を過ぎた25‰の上り坂の途中にあるコンパクトな形状のループ線です。
ラヌゼイの町の下端を一旦通り過ぎて、また戻ってきて再度町の上端をかすめていくという面白いルートになっています。
そもそもラヌゼイの町自体が山の北斜面にへばりつくように位置しており、不思議な感じがします。
どうしてもっと山裾の平地とか、同じ斜面でも日当たりのいい南斜面に町ができなかったのかと思って調べてみると、どうやらこのラヌゼイには水量豊富な泉があったからのようです。
日差しの強い地中海では日当たりよりも水が手に入る方が重要だったのでしょうか。
もう1ヵ所は島の北東部、九州でいうと筑豊のあたりでしょうか。サルデーニャ島の中心都市の一つサッサリから東の港町パラウを結ぶサッサリ・パラウ線のボルティジャーダス・スパイラル Elicoidale Bortigiadas です。
ボルティジャーダスの1回転半ループ。右に向かって上り坂です。 |
3回転以上の大規模ループを見てきたので少々麻痺していますが、1回転を超えるループ線は世界的にも数が少なく、その意味でかなり特徴的な面白いループ線です。こちらは1931年の開通です。
- 観光列車が今も走る
サルデーニャ島の2カ所のループ線では1997年に一般旅客輸送が廃止されましたが、トレニーノ・ヴェルデ Trenino Verdeと呼ばれる観光列車が引き続き今でも走っています。直訳すると「緑の小さい列車」です。あまり観光列車っぽい味付けのされていない素朴な感じの単行ディーゼルカーがのんびり走っています。
マンダス・アルバタックス線セウイ駅のトレニーノ・ヴェルデ まったく俗化していない素朴なローカル線風情です |
※2018年ダイヤが発表されました。アルバタックス線も部分開通してピチュエクックスパイラルへの列車も週に3往復復活しています。しかし、まだアルバタックス側からアクセスできません。ボルティジャーダススパイラルは7月以降の運行でまだ運転が始まっていません。詳しくは→こちら 2018/5/26追記
値段はどちらも往復で約2500円程度です。貸し切り列車ありとHPには出ていますが、具体的な内容は分かりませんでした。2011年ごろまでは貸し切りSL列車が走っていたそうですが、2016年現在はやっていないようです。
ピチュエクックへは起点のアルバタックスまでのアクセスが困難で、ボルティジャーダスへは1週間に1回しか列車がないため、1週間程度のサルデーニャ島滞在で両方のループ線を制覇するのは結構大変そうです。
まあ、世界的な保養地で分刻みの駆け足旅行をするのも無粋ですので、日程に余裕をもって乗りに行くのがよさそうですね。
次回は、残念ながらすでに廃止されているカナダ・ニューファンドランド島のループ線をご紹介します。