- マニア受けするループ線の国、ブルガリア
今回はブルガリアのバルカン山脈を貫く異色の連続ループをご紹介します。
ブルガリアは北海道ほどの面積の国ですが、ドヴリニーシュテ線のアヴラモーヴォの前後に4つ、クリスラに1つ、今回ご紹介する4号線に2つと計7か所ループ線があり、ヨーロッパではスイス、イタリアに次ぐループ線大国です。
しかもブルガリアのループ線はすべて現役で旅客列車が走っており、一つも廃止になっていません。これは割と地味にすごいかもしれません。
右から2番目の南北を結ぶ路線が4号線 |
1900年代の初頭から建設されていましたが、標高1200mのシプカ峠を越える山間部の工事に手間取り、予定よりもだいぶ遅れて1913年に開通しました。この最後の開通区間に二つループ線が作られています。ここはシプカ峠の上りと下りに一つずつループ線がある双子ループになっています。
- 8の字ループと6の字ループ
この4号線の双子ループは南側のループ線をオスモルカータ、北側のループ線をシェストルカータと呼びます。日本語にするとオスモルカータは「8の字」、シェストルカータは「6の字」ですが、地図を見ると納得、まさに線路が6の字と8の字を描いています。
どちらも25‰勾配、曲線半径275mとスペック的にはこの時代の幹線級鉄道の標準スペックです。
オスモルカータの線路図 |
ラドゥンツイ駅。山間にしてはかなり大規模な駅です |
一方シェストルカータ「6の字」の方は見た感じ普通の4分の3回転ループ線なのですが、ひそかに世界トップレベルだったりします。何がトップレベルなのか、一発で正解できれば相当のループ線マニアだと思いますが、お分かりでしょうか。
こちらはシェストルカータ |
実はシェストルカータはループ線の輪の部分の大きさが世界トップレベルなのです。輪の部分の全長が4.8kmあり、一周するだけで標高差を約90mを稼ぎます。舞浜のディズニーリゾートラインと同じぐらいの周回距離と言えば分かりやすいでしょうか。
バゾヴェッツ駅のハイキングコース案内版 |
ちなみにループ線の輪の長さランキングで、一位は中国水柏線三重ループの一番上のループ線で約6.8km、二位はスペインのレオン=コルーニャ線にあるラ・グランハのループ線の約5.0kmです。シェストルカータは3位ですが、一周で稼ぐ標高差では25‰勾配のシェストルカータがトップです。
シェストルカータのちょうど線路の交差部分にバゾヴェッツというホームだけの無人駅があります。ここ一帯はブルガリアでは割と有名なハイキングコースになっています。
- 旅客列車は豊富だけど・・・・
シェストルカータの交差部のトンネルだそうです。 トンネル上部を線路が通っているはずですがまるで見えません |
4号線はマイナールート扱いで、ローカルの普通と快速だけが運転されています。貨物列車の方が多く走っているそうですが、それでも旅客列車は1日5往復10本あり、乗車するのはそれほど難しくありません。
どの列車も二つのループ線をセットで走ります。片道約2時間の行程です。首都ソフィアから5時間ほどかかりますので日帰りはちょっと難しいかもしれません。
ところが、残念なことにこの4号線のループ線は、線路の引かれている部分の地形と、森林が豊富なブルガリアの山並みの両方の要因で、どちらも致命的に視界が効きません。
乗ってるだけではループ線と気が付かず、ちょっとカーブが多いかなぐらいで通り過ぎるのではないかと思います。自分の通ってきた線路を車窓から見るというループ線の楽しみにも期待できません。
You Tube にオスモルカータ(8の字)の方の動画がありましたので引用しておきます。ラドゥンツイ駅から山を下る列車です。眺望の効かない様子がよく分かります。
ループ線は景色のために作られているわけではないので、これはしょうがないですよね。
次回は再び中国の連続ループ線をご紹介します。