- マニアでなくても知っている
レーティッシュ鉄道と言えばベルニナ線のブルージオがオニの知名度を誇っていますが、今回のアルブラ線も負けていません。むしろ観光ルートの関係でブルージオには行けなかったけど、こちらは行ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。ブルージオはアルブラ線から少し離れていますので、別の機会にご紹介します。
レーティッシュ鉄道はスイス南東部、地図の右下にあたるイタリアとの境の部分に400㎞の路線網を持つメーターゲージの私鉄です。
私鉄とは言ってもスイス連邦が43%、地方自治体が51%出資している日本でいうところの第3セクター路線で、実体はほとんど公営鉄道です。
アルブラ線はレーティッシュ鉄道の本線格の路線で、標準軌のスイス国鉄が乗り入れるクールからサンモリッツまでの約100㎞を結んでいます。急峻な地形をラック式ではなく通常の粘着式で建設し、難工事の末1903年に開通しました。意外と古い歴史があります。ベルニナ線とともに世界遺産に指定されている超有名な観光路線ですが、実はどちらもローカル列車が頻発しており、地域交通の中でも重要な役割を担っています。
戦後何度か旅客減で経営危機に陥いってますが、有名な氷河特急Gracier Expressの設定による観光需要の取り込みで盛り返しに成功しています。私見になりますが、粘着式だからこそ存続できたという側面があったと思います。
- バラエティ豊かな4連ループ
このうちフィリスール・プレダ間は、ループ線が4つ連続するループ線マニアにとってもハイライト区間です。ここではループ線はトンネルの名前で呼ばれており、下のフィリスール駅側から順にグライフェンシュタイン、ゴット、ルークヌックス、トウア・ツォンドラとなっています。
ルークヌクスループトンネル。こちらからお借りしました。 |
ムオト信号場の先にあるルークヌックス・ループトンネルもマニア的にはそれほど変わったところのないループトンネルです。
最上部にあるトウアトンネルとツォンドラトンネルからなる8の字ループがやはりここの見どころでしょう。
なんとかして高低差を克服しようとした苦心の跡を見ることができます。世界のループ線の線形の中でも傑作の部類に入ると思います。二つのループ線をヘアピンカーブで結んでいる相当珍しい形の二重ループです。ここだけで標高差120mを稼いでいます。
トウアトンネルから見た風景です。超有名なアングルですね。 |
フィリスール駅から4つのループ線を越えてプレダ駅までずっと35‰勾配が続き、最小曲線半径は100mとハードな山岳路線で、この二駅間の片道30分間で4カ所のループ線を通ります。ゴッタルドバーンに並ぶ世界一のループ線密集度です。
普通のループ線、ダブルヘアピン、8の字二重ループと形状のバラエティに富み、さながらループ線の見本市の様を呈しています。3種類の形状のループ線を連続一乗車で体験できるのはこことゴッダルドバーンだけです(中国の成昆線でも一昼夜かかりますが、一応一乗車で体験することができます)。
- 楽しみ方いろいろ、観光特急だけじゃない
アルブラ線を通過する旅客列車には、氷河特急、ベルニナ特急Vernina Expressの直通列車、ローカル列車の3種類があります。
氷河特急はサンモリッツからマッターホルンゴッダルド鉄道に乗り入れてツェルマットまで走っており、冬季1日1往復、夏季3往復です。
ランドヴァッサー橋を渡る氷河特急。ランドヴァッサー橋はフィリスールのすぐ先です。 これもめちゃくちゃ有名なアングルです。 |
ベルニナ特急にはサンモリッツ止まりでアルブラ線に乗り入れない列車もあります。アルブラ線直通のベルニナ特急は夏季のみ1日2往復です。
前述のとおりここではローカル列車も8時台から22時台まで毎時1本ずつ、16往復32本あり、地域ローカル輸送にも鉄道が大活躍しています。
このアトラクションはファミリー向けののんびりしたものかと思いきや、滑ってる人同士がぶつかったりスピードの出しすぎでコースアウトしたりで毎シーズンけが人の出るかなりスパルタンなものらしいです。ループ線とは直接関係ありませんが、これは楽しそうです。
このシャトル列車は1日最大13本(時期と曜日によって変動あり)、フル運転する日はほぼ終日30分間隔の運転になります。日没後もナイタースキーの要領で滑ることができるそうです。昼間は混雑で思うように滑れない場合もあるけど夜は空いていておススメ、そのかわりコースアウトすると最悪凍死する危険性もある、とか怖いことが書いてあります。
なお、このシャトル列車は上り方向のプレダ行きのみ営業運転で、下り方向のベルギュン行きは回送列車になります。下りはそりで滑ってこいということですね。スキー場のリフトがわりに電車を使うというなんとも大胆な取り組みです。レーティッシュ鉄道のHPは→こちら
観光用の展望特急で優雅に行くか、ローカル列車でじっくり行くか、シャトル列車&そりでアクティブに行くか。
知名度抜群のアルブラ線ループ線群は多様な楽しみ方ができます。
次回は韓国の連続ループをご紹介します。