- 大陸横断の障害
南北アメリカ大陸はどちらも太平洋側の山脈が大陸横断の障害となっていました。その北米側の障壁だったロッキー山脈は北アメリカ大陸南部カリフォルニア付近では砂漠の岩山が中心ですが、カナダまで来ると森と氷河の山脈になります。いわゆるカナディアンロッキーです。
人口の希薄さはどちらも似たようなもんですが、水と木がふんだんにある分気分的に落ち着きます。少なくとも南米アンデス山脈に横たわるアタカマ砂漠の無人地帯に比べると寂寥感・世紀末感はありません。それでも地形的には砂漠とは違った険しさがあり、鉄道建設の先人の苦労が見て取れます。氷河が作るU字谷は谷底は平らなのですが、どこへ行くにも絶壁を上ることになる鉄道の最も苦手な地形です。
- カナディアンパシフィックの挑戦
カナディアンロッキー山脈の内部では基本的に川は南北方向に流れています。従って東西の大陸横断を試みようとすると何度もU字谷を上って降りることになります。それでも果敢に挑んだのがカナディアン・パシフィック鉄道、現在のカナダ・ナショナル・レイルウェイです。ナショナルと付いていますが民営会社でCNと略称します。
ちなみに昔は本当に国有でCNRと称していたのですが、1995年の民営時にそのままの名称で略号をCNとしたようです。CRと略していれば日本のJNR⇒JRと同じだったんですが、惜しいですね。
カナディアン・パシフィック鉄道がこの峠に線路を初めて開通させたのは1884年で、実は大変歴史のある鉄路です。
当時大陸横断一番乗りを目指して鉄道会社同志で建設を競っており、一刻でも早く開通させたかったことから、建設期間短縮をするためにまっすぐ坂を下る45‰の急勾配の線路で当初開業しました。
目論見どおり、カナディアンパシフィック鉄道は単独の鉄道会社として初めて北米大陸の東西を結び、開業後は東西輸送で大変賑わったようです。キッキングホース峠の急坂にはThe Big Hillといういかにもアメリカ大陸的なニックネームが付く鉄道名所となりました。
- 新線への付け替えとループトンネル
ところが、日本で言えば明治初期のこの時代の非力な蒸気機関車に7km続く45‰の連続勾配はさすがに酷でした。 前部2両、後部2両の蒸気機関車を連結し、旅客列車は13km/h、貨物列車は10km/hの速度制限で急坂を下っていったとあります。上りよりも下りに苦労したらしいことは、設備的に下り坂の途中に3か所非常停止用待避線が作られていることからも分かります。簡単に言えば規模の大きな脱線転轍機なのですが、それでも何回か下り坂で止まれないという暴走事故を起こしてしまいました。
線路図 左に向かって下り坂 |
新線の建設で勾配は22‰になり、輸送力も上がりました。ダブルヘアピンの両側がループトンネルというインパクトの強い線形ができるまでには、こんな経緯があったんですね。現在、旧線の上半分は高速道路建設の際になくなったようですが、下半分は遊歩道になっているとのことです。
- 世界でも珍しいアレが見られる
先頭の機関車がループを抜けてます |
しかし、この急曲線ループのおかげで、ここでは世界でも珍しいものが見ることができます。それは何かと言うと「最後尾の車両がループに入る前に先頭車がループを抜ける」現象、長ったらしいですが要するに蛇のとぐろ列車が見られるということです。私の調べた限り、こことアメリカのテハチャピループだけと思われます。残念ながら確証はありません。他でもあるよ、という情報がありましたらお知らせください。
- 旅客列車も
こちらのブログでもキッキングホース峠について解説されています。地形から線路を追う感覚で世界のいろいろな鉄道を紹介されているサイトです。他にあまりない視点ですが、当ブログと趣旨がかぶる部分もあり個人的に非常に尊敬しています。是非ご一読いただければと思います。
次回はオーストラリアからベサングラのループ線をご紹介します。
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