- ループ線の最終形態
スイスのシンプロン峠の街ブリークとゴッダルド峠の街アンデルマットの間にフルカ峠という標高2400mの峠があります。
ループ線上では行き違い設備はありませんので、この写真は多重露光だと思います。 こちらからお借りしました。 |
標準勾配が66.7‰、最急勾配が110‰というとんでもない路線ですが、さすがに110‰勾配を粘着式で走るのは物理的に難しかったためラック式を併用していました。
ここのラック式は日本でおなじみのアプト式です。
この路線はスイス・イタリアを結ぶメインルートだったシンプロン峠とゴッタルド峠を相互に補完する形になっています。
地形的には峠の西側が地中海に注ぐローヌ川水域、東側はチューリッヒ湖経由で北海に注ぐライン川水域で、大陸分水嶺の一つになっています。
グレンギオルスループトンネルを走る氷河特急 |
当初は蒸気機関車による運行でしたが1941年に電化されました。
このフルカ峠の西麓はローヌ川の作る氷河谷が極めて深かったため、鉄道を通すにあたって2ヶ所ループ線が作られました。
下のループ線はグレンギオルス・ループトンネルという名称で、66.7‰、曲線半径80mの小規模なものです。それでも高低差は40mほどあります。ほぼ全線がトンネル内ですが、トンネルを出たところで谷側を一望できます。
こちらからお借りしました |
- U字谷をループ線の最終形態で乗り越えろ
なんと、勾配が110‰のラック式併用区間に作られています。ラック式とループ線を同時に併用して斜面を克服したのは世界でもここだけです。逆に言うと、普通は鉄道敷設を諦めるべき地形だということでしょう。
U字谷の最奥部にループ線があります。 右上の崖の高い木の根元あたりにトンネルの出口があります。 |
そのため、曲線半径90m全長600mほどの小規模なループ線にもかかわらず、高低差は70mにもなっています。
以前はこの二つのループ線は直通列車が走っていたのですが、上の方のラック式を含む峠越え区間は冬は豪雪の難所でした。そのため冬期間中は電化区間にもかかわらず架線を外し、鉄橋もすべて収容して運休となっていました。
さすがにこれでは輸送需要をまかないきれなかったため1982年にこの区間をバイパスする全長15kmのフルカベーストンネルが建設され、上のループ線グレッチ・ループトンネルを含む峠越え区間は廃止されました。
ところがこの氷河を望む峠越え区間の景勝を惜しむ声が強く、2000年にはグレッチ以東が、2010年にはループ線を含む全区間が観光列車として再建されています。 ただし電化は復元されず、蒸気機関車での運行になっています。
再建された時に、この観光列車区間だけは別会社となったため、現在はグレンギオルス・ループトンネルとグレッチループトンネルを一乗車で連続走行する列車はありません。
- 手軽に楽しめるスイスのループ線
下のループ線グレンギオルス・ループトンネルは、現在でもマッターホルンゴッダルド鉄道の一区間として地域間輸送の役割を担っており、1日に氷河特急を4往復を含む23往復の列車が走っています。日中はほぼ1時間に1往復の列車が走るので、乗るのは簡単です。
フルカベーストンネルの開通前はレーティッシュ鉄道ベルニナ線に直通してティラノまで行く氷河特急があり、ベルニナ線で1ヵ所、アルブラ線で4ヵ所、フルカ峠で2ヶ所の計7か所のループ線を1日で走破できるというループ線マニアには夢のような列車が走っていました。おそらく一列車でのループ線最多通過列車だったと思います。
先に述べたとおり、フルカ峠の上のループ線は観光列車専用ですので、現在では氷河特急に乗っても最大6ヶ所しかループ線を走破できません。
しかも2018年夏ダイヤではベルニナ線直通列車は運休になっており、アルブラ線経由でサンモリッツが終点ですので、ベルニナ線のブルージオスパイラルまで直通していないため最大で5ヶ所です。
いずれにしても1泊もすればスイスのループ線はあらかた走破できます。さすがループ線大国ですね。
あっと言う間に2か月も更新をさぼってしまいました。
ちょっと反省して次はできるだけ早く更新したいと思います。
次回はアメリカの謎の多いループ線をご紹介します。
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